from My Bookshelf (3)

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ECサイトでの本の購入がここまで一般的になると、中身を見ずに注文することに躊躇いを覚える場面も時々あるのだが、この「京都の市電 昭和を歩く - 街と人と電車と -」 福田 静二 著(トンボ出版)は、何ら躊躇することなく「ポチッ」て、その内容が期待通りいや期待以上だった数少ない書籍のひとつだ。何故そうなのかと言うと、多くの雑誌・書籍に鉄道写真を発表されている著者福田さんのカメラアイと、自分自身が憧れ追い求めているそれとがぴったり一致しているからに他ならない。そう、福田さんのお名前だけで注文してしまったと言っても過言ではない本なのだ。実際本書はオーソドックスな表紙写真から想像するような鉄道趣味書としての側面だけではなく、むしろ副題の「昭和を歩く - 街と人と電車と -」に込められたメッセージになるほどと納得してしまう、珠玉の写真の数々が散りばめられた、「市電が走っていた頃の京都」の写真集だった。

京都というと、数多くの神社仏閣や祇園祭等に代表される古都のイメージが思い浮かぶが、この本に網羅されている写真の視点はもちろんそれだけに止まらない。夏は魚釣り、冬は雪合戦、そして凧揚げに興じる子供達。通勤通学客や受験生で溢れかえる電停。早朝の斜光線に浮かび上がる孤影、繁華街の車の光跡に埋もれる夜・・・市電と京の日常が、3万カットというから36枚撮フィルム換算で800本以上!にも及ぶ福田さん撮影の膨大なネガに裏打ちされて、その中から数多くの力作が惜しげもなく公開されている。それに加えて、おやっ、この写真は?と思って見ると案の定我が母校の先輩K氏の撮影だったり、また古くはキネ旬「蒸気機関車」誌で、そして今でも「国鉄時代」誌等で拝見する方のお名前もある。これでもかと、強力な助っ人の写真でも完璧なまでに補完されているのだ。

ページをめくる度に、改めて自分との写真技量や感性の差に大きなため息ばかりが出てしまう本書だが、購入してちょっぴりホッとしたことがある。福田さんとは8つも年が離れていることが分かったのだ。これじゃあ無理もない。草津・信楽・関西線の蒸機、京都市電等々同じ時代に同じ被写体を撮ってはいるものの、文字通り赤子の手をひねられていたのだ。そう思って納得するしかない素晴らしい一冊。新旧鉄道ファンはもちろんのこと、昭和の京都に想い出がおありの「非」鉄チャンにも手放しでお薦めしたい。

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